デイサービスで幸せにはたらく。

広島市中区江波のデイサービスセンターけいあい園の相談役のブログ。参謀として、理解者として、黒子として、トップと現場の橋渡し役になりながら、素敵な職場・介護事業所にするお手伝いをしています。ブログを書くのもそのひとつ。記事によってはけいあい園以外の方、介護業界以外の方にもお役に立てると思います。組織運営でお悩みの方、現場で悩みながら働かれている方のきっかけになれば幸いです。

第26話 セルフ脳トレコーナーの意図を・・

こんにちは、藤田です。

 

先日、けいあい園の壁に『セルフ脳トレコーナー』を設置しました。現場にいない私がコーナーを管理することができないので恐縮ですが、ゆえにそれをする理由やメリットを皆さんに3ヶ月以上かけてお伝えしてきました。

 

『セルフ◯◯コーナー』作りの意図を理解して、日々のサービスに生かしていただくために、改めてブログに書き残しておきます。

 

●介護職員が利用者の活動をお膳立てする時間が無駄

職員がプリント片手に『◯◯さん、塗り絵でもしませんか?』『◯◯さん、計算問題はいかがですか?』多くのデイサービスで見られる光景です。やりたかったわけでもないことを勧められても楽しめるでしょうか?現場としても、いったい何をすれば喜ぶのだろうと四苦八苦です。楽しむわけでもなく、機嫌をよくしてあげることもできず、介護でもなんでもない何とも言えない時間を過ごしていませんか?何も始まらないなら、会話をして色々な感情を引き出す方が良いです。

 

●一定のサービスレベルを維持するためのしくみ作り

介護現場は特定の職員、例えば明るく元気があって声が大きかったり、機転が利きいつも問題解決してくれるような“スーパーマン”がいる時といない時の盛り上がりにばらつきが出やすいです。人の力を頼るのではなく、練りに練ったアイディアをセルフサービス形式で配置することで、マンパワーによる差を少しでもなくし、いつ行っても同じような楽しみ方ができる環境を提供して差し上げることが重要だと考えます。

 

●利用者が自分ですることを決めることの重要性

デイサービスは利用者の自立した暮らしを支える拠点としての役割があります。にもかかわらず、安全だから・時短だからと“余計なお世話”をすることで出来る動作を奪ったり、我々が頼れる存在として利用者の日常にどっぷり入り込むことによって、依存を加速させてしまうケースもままあります。『してもらうこと』に慣れさせるためにデイサービスに通っているのではないはずです。家に帰ったら、自力あるいは極力他人の負担にならないよう暮らしていくためにデイサービスがあるという基本に立ち返りましょう。介護をしなくていいと言っているのではありませんので念のため。

 

●現場が本来エネルギーを注ぎたい仕事はその先

過ごし方の提案で多くの時間を割いていた現場スタッフにとっては、お膳立ての時間が大幅に減って『見守り・アセスメント・次なるアプローチ』に時間を割けるようになります。利用者が能動的に活動するようになったので『立ち上がりの動作に一工夫必要だな・・』『肩の可動域がいまいちだな・・』『この方はこれが得意(好き)なんだ』『認知症は進行していないだろうか』と、プロとして本来の見せ場を作るための仕事に集中することができます。あれしませんかこれしませんかはボランティアや小学生にでもできます。地域交流や社会参加の意味で、本当にボランティアや小学生に提案しても良いと思いますよ。

 

●フロアの有効活用

けいあい園は2階、3階とフロアが2つになっています。不便な部分に関しては考えても仕方ありませんので、2フロアある強みを最大限に活用する必要があります。例えば2階ではカラオケやお風呂、運動や体を使ったレクリエーションなど活動的に過ごしていただき、3階では整体師によるリラクゼーション、読書や音楽、映像、喫茶、アロマなどでリラックスしてもらったり手芸や工作、脳トレプリントなど黙々と集中したりしたい方が活動できるフロアとして活用してみるとか。好みに応じてタイプの違うフロアを行き来できたら、一度行って二度美味しいデイサービスとして人気が出るでしょうね。

 

●問題を解くだけが認知症レーニングではない

セルフ脳トレコーナーといえば聞こえはいいですが、プリントをやっていただくだけが目的ではありません。利用者自らがやることを自分で決めたり、考えたり楽しんだり、自分でスケジュールを立てたり、セルフ◯◯コーナーがあることによって能動的に物事を捉えるようになれば、それこそがもっとも協力な認知症対策と言えるのではないでしょうか。年をとって目的もやりがいも自信も無くしかけていた人の目に輝きが戻ったら、あとは勝手に元気になっていくと思います。

 

●利用者のワクワクを増やし、ヒマヒマを減らす

高齢者の認知症や廃用を防ぐのに重要なのは、ヒマを作らないことです。まぁずっと忙しくしていようというわけでもありませんが、やるべきこと、やりたいことが常にある状態だと人間は生き生きしてくるものです。セルフ脳トレコーナー以外にも、いろんなセルフサービスの仕掛けがあって良いと思います。そもそも実生活では、食事もトイレも風呂も買い物も寝ることも趣味も、なにもかも自分でやる、セルフサービスですよね。さずがにゼロから作り上げるのは無理がある方もいると思うので、選択肢を提供するということをデイサービスとして取り組みたいものです。

 

●わかりやすい『売り』作りのため

私たちはボランティアじゃなくビジネスとして通所介護を提供していますから、お客様に選ばれる必要があります。お客様が選びやすくするためには、事業所がどんなところか、そこに行けばどんな過ごし方ができるか、生活にどんな変化が起きるか、イメージできるようにしてあげないといけません。『けいあい園はどんなデイサービスですか?』という質問に対して、曖昧な答えでは良いケアをしていても伝わりません。『セルフ脳トレコーナーってなんですか?』って言われたら、ここに書いてあることを伝えれば良いのです(^^)

 

 

いかがでしょうか?考えればきりがないくらい、まだまだ出てきそうです。

 

利用者さんが、誰かにやらされるでもなく、自分でやりたいことを見つけて楽しみ元気になっていく。職員は職種ごとにプロの視点でそれを見守り、改善にむけたアドバイスや必要な手助けをしていく。それが利用者の暮らしの自立につながり、家族の日常やケアマネジャーの仕事を助け、デイサービスとしても収益をアップさせ、自分たちの給料や誇り、やりがいやレベルアップに繋がっていく。

 

今回セルフ脳トレコーナーの作成にかかった時間はわずか1〜2時間。これが今後、利用者さんの暮らしや、現場の皆さんの価値観や理念共有にどのように影響していくか、稼働率に変化を及ぼすのか、他の仕掛けとの相乗効果も含めて期待しています。